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医学、口笛

日々の備忘録とあれこれ

「ヒットの崩壊」刊行記念イベントの話

柴那典さん著の「ヒットの崩壊」刊行記念イベントという名のリリパに行ってきたので、ざっくりどんな話をしていたかということと雑感をば。漏れはありますが、他のメディアや書籍も読んでいただけたらと思います。下の記事とか。

「音楽不況」は本当なのか? 2010年代に生まれた新たな希望(柴 那典) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)

イベントは著者である柴さんと、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミさんの対談形式でした。

 

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)

 

 

ヒットの崩壊は、ヒットという言葉の多様化による、これまでのヒットの指標(=オリコン)の崩壊を示していて、他に様々なヒットの指標が乱立している現状について二人が語っていた。例えば、ソーシャルでいかにバズらせるかを今やテレビも気にかけて、その上で番組構成(歌番組でいえば、どのアーティストとアイドルをコラボさせるかなんか)を考えている、とか。また、ストリーミングの黒船とも言われるSportifyは、バイラルチャートという再生回数にSNSのエンゲージメントを加味したランキングを作っている。そもそもこの書籍は「J-POPの未来」が初期のタイトルだった。音楽不況と言われている状況に違和感を感じていて、特にライブをはじめとして、現場が盛り上がっているという自身の実感との意識の差を解明したいと思っていたのが最初。"ヒット曲なんかなくたって、ライブで盛り上がるからアーティストは大丈夫!"→"それって、ヒットの崩壊ですよね。それをタイトルにしてみては?"ということで、タイトルが変わった。
音楽のガラパゴス化、という現象もよく言われていることで、再生回数チャートを見てみると、関西や東京などのローカルに根ざした邦楽の発展と、グローバルでヒットした洋楽が混在している。柴さんは、こういった音楽が場所と関連付く現象を重要視しているようだった。

これは音楽を問わず言われている話だが、いま、情報が"分かりすぎる、届きすぎる"という問題に直面している。アーキテクチャによって、話題になっていることに付いていくある種の同調圧力が強くなっているようだ。逆に影響力の高いアーティストはそれを上手く活用している。例えばカニエ・ウエストは、最新アルバムをtidal限定でリリースしたが、私生活でのあれこれや靴のプロデュースなど話題性に富んでおり、そうしたメディアの活用がアルバムのヒットに結びついていると二人は分析していた。
またそれと対照的に、メディア露出も少なくライブも行なっていない宇多田ヒカルが、本人の意図していない海外での大ヒットを達成しているというのは面白い現象で、アーキテクチャに寄らないヒットを生む才能がぽんと出てきて一人勝ち、というケースもあることにも触れていた。
ジェイ・コウガミさん曰く、「音楽のデジタル化、フェス、7時間以上の歌番組、という現状が腑に落ちる書籍。多様化した音楽の聴かれ方を紐解いてくれている。」とのことだったので、早く読み終えたいなと思う。

 

有限な時間の奪い合いに、様々なエンターテイメントが参入していている中で、やはり音楽の聴き方に限らず、普段触れるものに似ているもの、周りで話題のものにすぐに出会える最適化・効率化が進んでいる(このイベントの会場がスマートニュースだったのも関連付けられているようにも思える)。ならば、やはり次に注力すべきなのは非効率の中の非線形的な出会いなのかな、と感じる。柴さんは場所に根ざした音楽について語っていたが、音楽に音楽以外の情報、時代背景やアーティスト同士の交流や地域性といった他の文脈を込めることが出来るのは、まだ人間の専売特許であってほしい。